ムーブメント教育・療法について
ムーブメント教育・療法はアメリカの神経心理学者マリアンヌ・フロスティック氏が1970年代後半から取り組んだ「動きを通した支援」を体系化したものです。氏に師事した小林芳文博士・横浜国立大学名誉教授・現日本ムーブメント教育・療法協会会長により広く日本に紹介され、独自の発展を遂げました。就学前の親子教室・保育園幼稚園・療育機関・小学校・特別支援学級・特別支援学校だけではなく、高齢者施設・シニアの地域活動・またニューリハビリテーションとして医療現場等でも幅広く活用されています。
これまで成田市下総公民館で乳幼児の親子ムーブメントサークル「ウッキークラブ」(月1回)・ムーブメント研究・実験親子教室「ムーブメント・パラシュート」(隔月1回)の活動をしています。
2022年8月日本ムーブメント教育・協会のセミナー千葉会場として開催しました。
ムーブメント教育・療法の特長
1. 遊びがベースです。
2. 個々の得意なところに注目します。
3. 環境との相互作用で発達を促す方法です。
4. 活動する中で自然に社会性を育てていくこともできます。
5. 「からだ・こころ・あたま」に働きかけようとする方法です。
6. 子どものことを知るためのアセスメントが確立しています。
7. 話し合いの中で子どもの捉え方・接し方を知る機会が持てます。
8. 柔軟に対応する力・子どもの良さを見つける力がつきます。
ムーブメントプログラム紹介…ロープムーブメントの巻
ロープを両手に持って「上」。ロープを結んでみんなと輪になって対面で行えばみんな大成功!
次は「下」。「右」「左」「前」…方向を変化させると、身体に対しての方向性を意識できます。
今度は「あたま」
「足」…身体の名前と場所がわかる「身体概念」にコミット。「オッとっと」自然にお尻でバランス姿勢。
ムーブメント遊具およびよく使う遊具の紹介
引用・参考:有限会社パステル舎遊具紹介・発達障がい児の育成・支援とムーブメント教育
パラシュート
ファンタジー・コミュニケーション遊具
ファンタジーな世界を簡単に演出できる。子どもの積極的な活動参加の意欲を掻き立て、集団での取り組みを促進する遊具。小型3m・中型5m・大型7mの3種類あり、人数や活動内容により使い分けができる。ムーブメントようにつくられた赤・青・白3色のパラシュートは強度高く、周囲もロープが通してあり、活動の幅が広がるようにできているが、風呂敷やオーガンジーなどの布をつなげる、カラービニール袋を貼り合わせるなど創作することも可能である
ビーンズバッグ
知覚運動・数教育・認知機能遊具
お手玉と同様の操作運動遊具。中身は衛生面を考慮し、プラスティック球を用いている。5色(赤・青・黄・緑・白)、3種の形(丸・三角・四角)、重さの違いなどを利用して様々な活動に取り入れることができる。表面はマジックテープ地になっており、附属の布製の的と合わせて活動を広げることができる。運動会用のお手玉等も利用できる。
カラーロープ
動きづくり・創造的運動遊具
基礎的な動きづくりから身体意識の教育、知覚運動、集団での活動、そして創造的活動まで様々な課題活動の中で展開できる。赤・青・黄・緑4色あることで知覚的な活動の幅も広がる。短3m・長10mの2種類ある。
プレーバンド
ストレッチ・知覚運動・精神運動遊具
ムーブメント遊具として市販されている物は、柔らかく伸び縮みする2.5cm幅のバンド(帯状)。長さは1.7mで両サイドは手首が入るよう輪になっているため、つかみやすく、連結する時にも役立つ。手足を動かすと自由に伸びて色々な広がりのある空間を作ることができる。
スカーフ
精神運動・創造的運動遊具
薄くて柔らかいナイロン製の布で作られている。軽くてフワッと舞い上がり、滞空時間が長いため目で追いやすいのが特徴。キャッチボールの初歩段階に用いやすい。赤・青・緑・黄・ピンクの5色があり、90cm×90cmの正方形、180cm×90cmの長方形2種あり、活動に合わせて使い分けができる。ハンカチやバスタオルの遊びに発展できる遊具である。
形板
精神運動遊具
色や形の概念化の学習や数の学習の基本的スキルを育むことができる。発砲ポリエチレン製のソフトな素材を用いた四角形・三角形2種の形。厚さ12㎜、1辺25cm。3色(ピンク・青・黄)。0~9までの数字が片面に書いてあることにより数概念を取り入れた活動も広げられる。ダンボールやベニヤ板などで創作することも容易である。
ハットフリスビー
知覚運動・精神運動遊具
直径18cmの布ナイロン製で容易に折り曲げたり、丸めたりすることもできる。縁が5色(赤・青・黄・緑・白)あり、マジック素材でできているため、ビーンズバッグ附属の的と合わせて活動を展開することもできる。フリスビーとして手首を使って遠くに投げる、キャッチする、また目標を作って飛ばすこともできる。相手が附属のミットをつけるることでそれを目標にすることもできる。
ユランコ
感覚運動・前庭感覚刺激遊具・コミュニケーション遊具
狭い場所でも使うことができ、ハンモックやそり遊びのような活動を行うことができる。垂直性・水平性・回転性の揺れの3パターンの遊びを作り出すことができる。市販されている物は大型(120cm×180cm)の物は強度が高く大人が子どもを抱きかかえて乗ることもできる。14個の持ち手がついているため、子どもでも手にかけやすい。附属の牽引ベルトを用いることでそり遊びにも展開できる。床面はナイロン素材を用い滑りやすくなっている。ボールや鈴などの楽器を乗せてパラシュートのような使い方もできためコミュニケーション遊具としても適している。バスタオルや毛布などで代用することもできる。
スペースマット大
空間図形学習・認知運動遊具
片面は5色(赤・青・黄・緑・ピンク)のゴム製のため伸縮する。30cm×90cmの長方形と30cm×30cm正方形の2種あり、活動により使い分けができる。床にランダムに置く時滑りにくく、足を乗せたときの感触も弾力があり心地よい。つなげることで造形遊びの幅が広がる。
フープ
知覚運動・精神運動遊具
一般的な体操遊具。大きさ・素材・色のバリエーションに富んでおり、活動に合わせて選べる。動きづくりから精神運動まで柔軟な活動を可能にする。
スクーターボード
前庭感覚刺激遊具
キャスターカーなど呼び名も色々。厚めの板にタイヤをつけることで前後左右回転の動きが容易にできる遊具。市販のものもあるが簡単に作ることができる。引いてもらうことで揺れを作り出すことができる他、自分で工夫して進むことで色々な姿勢や動きを引き出すことができる。
ハンプ
操作性遊具
セミナーからヒントをもらった創作遊具。厚めの帆布地で大きさは35cm×35cm。基本的に正方形のスペースマットと同様に使えるが、折りたたみやすいため折り紙のような操作が可能である。丸めても維持ができる。
その他こんなものも使えます
風船
ファンタジーな活動にはかかせない。
新聞紙
遊び方は無限大。引き出せる力も無限大。
カラーボール
ボールプールのカラーボールはムーブメント遊具との相性抜群
カラーパイプ
ラップの芯やトイレットペーパーの芯での創作遊具。太鼓のばちに変身したり、転がしたりいろいろできる。
ブロック
これはダンボールで作った創作遊具ですが、ソフト積み木やプラスティックのブロックだって使い方次第。
ジョイントマット
生活で何気なく使っているものもムーブメント遊具に変身
傘を使ったムーブメントもあります。時間空間意識を考えたプログラム。
こいのぼりだってムーブメント遊具。時間空間意識。社会性に働きかけるプログラム。
ムーブメント教育・療法アセスメント紹介
ムーブメント教育・療法には、MEPA-Rと障害の重い児のためのMEPA-ⅡRが開発されています。子どもの運動スキルや身体意識、心理的諸機能、情緒・社会性の発達の実態を把握し、これを活用することにより、具体的な活動案や支援プログラムを作成し、子どもに適した支援の流れを作ることができ、「なぜこの遊びが必要なのか」と言うエビデンスを明確にするとともに、PDCA「目標の設定→プログラム作成→実践→見直し」のサイクルを可能にします。
引用文献:MEPA-R活用事例集 小林芳文監修
MEPA-R
ムーブメント教育・療法プログラムアセスメント
- 発達年齢0か月から72か月までの3分野6領域・7ステージ・発達全領域から構成される。
- 3分野≫運動・感覚、言語、社会性
- 6領域≫姿勢、移動、技巧、受容言語、表出言語、対人関係
- 子どもの得意なところを見つけ、日々の生活や活動に反映させるためのアセスメント。
- 達成項目「+」、未達成項目「-」、芽生え項目を「±」でアセスメントし、プロフィール表に反映させることで、発達の全体像を捉えることができる。
MEPA-ⅡR
重症児・重度重複障がい児のムーブメント教育・療法アセスメント
- 発達がゆるやかでMEPA-Rでは捉えきれない未分化な対象児(重症児・重度重複障がい児)の実態を、精緻にチェックするためのアセスメント
- 発達年齢0~18か月までの2分野≫「運動感覚分野」「コミュニケーション分野」からなる。
- 運動感覚分野はさらに3領域≫姿勢、移動、操作 30の発達キー項目 各発達キー項目はそれぞれ5つの下位評定項目からなる。
- コミュニケーション分野は発達が未分化なため、言語・社会性・情緒領域を含んでいる。
- MEPA-Rとの大きなちがいは支援・領域上配慮しなければならない情報を収集できるようフェイスシートが設けられている。
ムーブメント教育・療法による発達ステップガイド
ーMEPA-R実践プログラムー
小林芳文編 日本文化科学者
MEPA-Rで評価する上で、そのやり方や基準がわかる参考書。また、評価ごとに具体的なプログラムや発達のポイントが記載されているのが特徴
障がいの重い児(者)が求めるムーブメントプログラム
ーMEPA-ⅡRの実施と活用の手引きー
監修・著 小林芳文 藤村元邦 飯村敦子 新井良保 當島茂登 小林保子 文教資料協会
MEPA-Rと同様MEPA-ⅡR版参考書。
その他のムーブメント教育・療法の代表的文献
発達に遅れがある子どものためのムーブメントプログラム177
小林芳文監修・著
横浜国立大学教育人間科学部附属特別支援学校編
学研
「運動」「認知」「情緒」からのプログラム、遊具からのプログラムなどを豊富に掲載。ねらいから具体的なプログラムのヒントを見つける時、使いたい遊具の遊び方バリエーションのヒントを見つける時に役立つ1冊。幼児教育にもマッチ。
発達障がい児の育成・支援とムーブメント教育
小林芳文 大橋さつき 飯村敦子編著
大修館書店
ムーブメント活動案が豊富に掲載。特に最後の活動案一覧は内容・ねらい・遊具どこからも活動を探しやすく、プログラム立案の際に非常に役立つ。
遊び場作りに役立つムーブメント教育・療法
小林芳文・大橋さつき著
明治図書
ムーブメントは遊びがベース。遊びの流れの中でストーリー性を持って展開していくためのプログラム作りのヒントが満載。幼児のムーブメントのバイブル。
MEPA-R活用事例集 保育・療育・特別支援教育に生かすムーブメント教育・療法
小林芳文監修
是枝喜代治 飯村敦子 阿部美穂子 安藤正紀
MEPA-Rをあらゆる角度から分析し、そこから読み取れた支援の方向性からの具体的活動案が掲載。MEPA-Rの読み取り方使い方を掘り下げて学べる。
運動・遊び・学びを育てる ムーブメント教育プログラム100
小林芳文 是枝喜代治 飯村敦子 雨宮由紀枝編著
最新刊 100のムーブメントプログラム掲載はもちろん、達成課題別にわかりやすく解説の他、実践現場の様子も掲載され、知りたいことがギュッと凝縮された1冊。
NPOあすらぼ松川も執筆に参加させていただいています。
子どもたちが笑顔で育つ ムーブメント教育
小林芳文 小林保子 花岡純子
幼児の療育機関での実践をベースにムーブメントの理論・遊具・実践でのプログラムをカラーフルな写真でわかりやすく掲載。